はじめに:あなたの“想い”を確実に未来へ届けるために
「財産をどう分ければ、家族が揉めずにすむのか」「内縁の配偶者にも何か残したい」「子どもの将来が不安だから、何か備えておきたい」——こうした不安や希望を抱えながら、遺言書の作成を考える方が増えています。
とくに、兵庫県の姫路市・揖保郡太子町・たつの市にお住まいの方からも、「遺言書を残すことで何ができるのか、何ができないのかを知りたい」というご相談が司法書士事務所に寄せられることが少なくありません。
この記事では、遺言書でできることを法的な視点から一覧で整理しながら、地域事情に即した事例も交えてわかりやすく解説していきます。

第1章|遺言書とは何か?今さら聞けない基本ポイント
そもそも「遺言書」とは?
遺言書とは、ご自身が亡くなったあとの財産の分配や、特定の人へのメッセージなどを法的に有効な形式で記す文書です。簡単に言えば、「自分の死後、何をどうしたいのか」を意思表示する最終の手段であり、法的な効力を持ちうるのが特徴です。
法的な意味を持たせるには、民法で定められた形式に則って作成する必要があります。たとえ家族に宛てた手紙やメモがあっても、それが法律上の遺言書と認められるには一定のルールに従っていなければなりません。
遺言書を作成するメリットとは?
遺言書がない場合、財産は法定相続人同士で話し合いながら分けることになります。これを「遺産分割協議」といいます。しかし、相続人が多数いたり、関係が複雑だったりすると、分割の合意が取れず、トラブルや裁判に発展するリスクも。
一方、遺言書があれば、分け方や優先順位を明確に示すことができ、残された家族の心理的・法的負担を軽減できます。
また、以下のような希望を持つ方には、遺言書の作成が特におすすめです。
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子どもがいない夫婦で、配偶者に全て残したい
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相続人以外(孫、内縁の妻、介護してくれた人など)に財産を渡したい
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自宅を特定の子どもに相続させたい
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家族に感謝の言葉やメッセージを残したい
第2章|【一覧】遺言書でできること8選(法的効力)
ここからは、実際に遺言書によって「できること」「できないこと」を明確にしながら、法的に効力がある項目を一覧で紹介します。
1.相続分の指定
もっとも基本的でよく使われるのが、相続分の指定です。たとえば「長男に全財産の60%、次男に40%を相続させる」といったように、遺産の分け方を自由に指定できます。
通常、遺言書がない場合は、民法により相続分が自動的に決まります(これを「法定相続分」といいます)。しかし、遺言書があればこの法定分とは異なる配分も可能です。
ただし注意が必要なのは、「遺留分」という最低限守るべき権利があること。たとえば配偶者や子どもには遺留分があるため、極端な差をつけると無効になることもあります。
2.遺産分割方法の指定・委託
遺産分割の方法そのものを指定したり、分割を第三者に任せたりすることも可能です。
具体例:
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「長男には不動産(自宅)、次男には預貯金をすべて相続させる」
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「全財産の分割方法は司法書士〇〇に一任する」
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「相続発生後5年間は分割を禁止する」など
遺産分割の禁止は、最長5年間までと法律で制限されています。
3.遺贈(相続人以外への財産贈与)
遺贈とは、相続人ではない人に対して財産を遺すことです。
たとえば…
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内縁の配偶者
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面倒をみてくれた親族や第三者
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お世話になった知人
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福祉団体や自治体など
兵庫県のような地域密着型のつながりが強い地域では、地域のNPOや寺社、教育機関への寄付という形での遺贈も少なくありません。
公正証書遺言でしっかり明記すれば、遺言執行者を通じて確実に希望が実現されます。
4.非嫡出子の認知
遺言書では、亡くなった方が自分の子どもとして認知していない非嫡出子を正式に認知することが可能です。
これは、たとえば生前には認知していなかったが、「亡くなった後でも自分の子どもとして法的地位を与えたい」という場合に有効な方法です。遺言書に「〇〇を私の子として認知する」と記すことで、法律上の親子関係が成立し、その子は相続人としての権利も得られることになります。
ただし注意点としては、認知によって新たな相続人が生まれるため、他の相続人との相続分の配分に影響が出る場合もあり、相続トラブルの火種になることも。可能であれば、生前に家族間で共有し合意を得ておくと安心です。
5.未成年後見人の指定
遺言書を通じて、未成年の子どもに後見人を指定することができます。
たとえば、夫婦で子どもを育てている中で一方が死亡し、残された配偶者ももしもの時に備えておきたい場合、「信頼できる親族」や「第三者(例:司法書士)」を後見人として指定しておくことで、親が亡くなった後の子どもの法的保護をスムーズにすることができます。
これは特に、片親家庭や再婚家庭など、家庭の事情が複雑なケースでは大変有効であり、家庭裁判所での後見人選任の手間も省けるため、遺言書での明記をおすすめします。
6.相続人の廃除・その取消し
著しい虐待や重大な非行があった相続人については、相続権を剥奪する=「廃除」という手続きを遺言書で行うこともできます。
たとえば、「生前に暴力を振るわれた」「全く介護に協力しなかった」など、明確な事情があれば、遺言書の中で「〇〇を相続人から廃除する」旨を記載することで、その人の法定相続権を奪うことができます(ただし、廃除の効力は家庭裁判所の審判が必要です)。
また、かつて廃除した相続人との関係が修復された場合は、「廃除の取消し」を遺言書で行うことも可能です。
このように、家族関係の複雑さや感情的な問題を含む場合でも、遺言書を通じて意思を明確にすることで、将来的な相続争いを防ぐ手立てとなります。
7.配偶者居住権の設定
2020年に新設された配偶者居住権は、遺言書で活用できる重要な制度です。
これは、たとえば夫婦の一方が亡くなったときに、「残された配偶者がそのまま自宅に住み続けられる権利」を保障する制度であり、自宅不動産を別の相続人に渡す場合でも、住む権利だけを配偶者に与えることが可能になります。
遺言書で「配偶者〇〇に配偶者居住権を設定する」と明記しておけば、遺産分割協議を経なくてもスムーズに権利が認められ、残された配偶者の生活基盤が守られることになります。
兵庫県の太子町やたつの市のように、世帯構成が高齢化している地域では、この制度を活用するケースが今後さらに増えていくと考えられます。
8.遺言執行者の指定
遺言の内容を実際に執行する役割を持つ人を「遺言執行者」と呼びます。たとえば、以下のような業務を担当します:
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不動産の名義変更
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預貯金の払戻しと分配
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相続税申告・納税手続き
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認知の届け出 など
遺言執行者を指定しておけば、相続手続きをスムーズに進めやすくなり、相続人間の争いを回避しやすくなります。司法書士など第三者を指名するケースも多く、相続に慣れていないご家族にとっては大きな助けとなります。
第3章|法的効力はないけれど…「付言事項」の活用も大切

ここまで紹介した内容は、すべて法的効力がある項目でした。しかし、遺言書には「付言事項(ふげんじこう)」と呼ばれる、法的効力はないけれど重要なメッセージを記すこともできます。
たとえば、次のような内容が付言事項としてよく記載されます:
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「家族仲良く過ごしてください」
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「この財産は母が大切にしていたものです。形見として受け取ってください」
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「相続税の支払いは生命保険金でまかなってください」
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「遺産分割に関して揉めることなく、協力して対応してください」
このような付言事項は、遺族への感謝や配慮、円滑な相続手続きへの想いを表すものであり、遺言者の人柄や価値観がにじみ出るパートです。
また、法的に効力はなくても、実務上は遺族の心情に強く働きかけることが多く、遺産分割協議に影響を与えることもあります。ですから、付言事項も慎重に、かつ誠意をもって書くことが推奨されます。
第4章|遺言書の3つの形式とその選び方
遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。目的や家庭状況、財産の種類などに応じて、最適な形式を選ぶことが大切です。
1.自筆証書遺言:費用がかからず手軽だが注意点も多い
自筆証書遺言は、本人が全文を自筆で書いて作成する形式の遺言書です。最も手軽で費用もかからず、いつでもどこでも書くことができる点が大きな魅力です。
メリット
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作成費用がほとんどかからない(紙とペンさえあればOK)
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誰にも知られずに作成・保管できる
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自分の想いをそのまま自由に書ける
デメリット
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民法上のルール(全文自書、日付、署名、押印)が守られていないと無効になるおそれ
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紛失・偽造・改ざんのリスク
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死後、家庭裁判所での「検認手続き」が必要となるため、相続手続きに時間がかかる
現在では、法務局における自筆証書遺言の保管制度(2020年開始)も整備されつつあり、形式不備のリスクや紛失の心配はやや軽減されつつあります。ただし、それでも形式要件には注意が必要です。
2.公正証書遺言:安心・確実に遺言を残すならこれ
公正証書遺言は、公証人と証人2人の立会いのもと、公証役場で作成する公的な遺言書です。兵庫県内には、たとえば龍野公証役場、姫路東公証役場、姫路西公証役場などが利用可能です。
メリット
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公証人が作成に関与するため、法的に無効になるリスクが極めて低い
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原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない
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検認手続きが不要なため、死後すぐに相続手続きに移行できる
デメリット
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作成には費用がかかる(目安:2〜5万円程度+証人日当等)
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公証役場へ出向く必要があり、手続きに手間がかかる
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証人2名の立会いが必要
特に財産が多い、家族構成が複雑、または相続トラブルの火種がありそうなケースでは、公正証書遺言を選ぶのがもっとも安全で確実な方法です。
司法書士に相談しながら作成を進めれば、遺言内容の法的確認や証人の手配までサポートしてもらえるので、安心して進められます。
3.秘密証書遺言:内容を秘密にしたい方向けだが実務的には少数派
秘密証書遺言は、本人が作成した遺言書の内容を秘密にしたまま、公証人と証人2名の前でその存在を証明してもらう方式です。
メリット
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遺言の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在のみ公的に証明できる
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自筆でなくワープロやパソコンでも作成可能(署名は自署)
デメリット
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内容の有効性は担保されない(形式ミスなどがあっても誰もチェックしない)
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死後は検認手続きが必要
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実務上、利用されることは稀
この方式は「誰にも見せずに遺言内容を残したい」という方に向いていますが、形式のミスがあっても誰にも指摘されないため、内容が無効になるリスクが高く、慎重な扱いが求められます。
自分に最適な遺言書の形式は?
以下のチェックポイントを参考に、自分に合った方式を選んでみましょう。
| チェック項目 | おすすめの形式 |
|---|---|
| できるだけ費用をかけたくない | 自筆証書遺言(+保管制度) |
| 法的に確実な遺言を残したい | 公正証書遺言 |
| 遺言の存在は証明したいが内容は秘密にしたい | 秘密証書遺言 |
地域の事情に合わせて、たとえば姫路市や太子町、たつの市などで高齢者世帯が増えている現状では、トラブル防止や名義変更を視野に入れて公正証書遺言を選ぶケースが多く見られます。
第5章|円満な遺言書にするための5つのポイント

遺言書は、単に法的な効力を持たせればよいというものではありません。残されたご家族が安心して生活を続けられるようにするためには、「円満な遺言書」であることが極めて重要です。
この章では、相続トラブルを回避し、気持ちよく相続手続きを進めるために、司法書士の立場から考える「円満な遺言書作成のコツ」をご紹介します。
1.遺留分に配慮した内容を心がける
相続人には、民法で保障された「遺留分(いりゅうぶん)」という最低限の取り分があります。これは、たとえ遺言書があっても奪うことができない「保障された権利」で、次のように定められています。
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子や配偶者:法定相続分の1/2
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直系尊属(親など)のみが相続人:法定相続分の1/3
たとえば、「すべての財産を内縁の妻に相続させる」といった内容の遺言があった場合でも、法定相続人(例えば子どもなど)が「遺留分侵害額請求」をすれば、その一部を取り戻すことができます。
つまり、遺留分に反する内容の遺言書は、争いの火種になる可能性があるのです。
▶ アドバイス:
「すべてを〇〇に遺贈する」というような一方的な文言ではなく、「法定相続人に対しては遺留分を尊重する」「付言事項で事情を説明する」など、心情と法律のバランスを取った内容にすることが大切です。
2.財産の内容と評価を明確にする
遺言書では「誰に、どの財産を、どれくらい渡すか」を記載することになりますが、財産の記載があいまいだったり、価値に偏りがあると、後々トラブルになる可能性が高くなります。
よくあるトラブル例:
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「自宅は長男に、預貯金は次男に」と書いたが、実は自宅の評価額の方が大幅に高かった
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「不動産」とだけ書かれていて、どの物件か特定できない
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土地を相続させたが、後に地中埋設物が見つかりトラブルに
▶ アドバイス:
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財産は「種類」「場所」「評価額(可能であれば)」を明記
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不動産なら所在地・地番・面積・固定資産税評価額を添える
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預貯金や証券なら、金融機関名・支店・口座種別・口座番号などを記載
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評価額に差がある場合は、他の遺産や特別受益を組み合わせて調整
3.家族への「思い」や「背景事情」を付言で補う
前章でも触れたように、遺言書の「付言事項」には法的効力はありませんが、相続人の理解を得るための感情的な橋渡しとして非常に重要です。
たとえば…
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「長男に自宅を相続させるのは、同居して私の介護をしてくれたからです」
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「遺産分割については皆さん仲良く話し合って進めてください」
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「相続税は生命保険から支払えるようにしています」 など
このような一言があるだけで、相続人同士の感情的な対立を防ぐ効果が期待できるのです。
▶ アドバイス:
特定の相続人に多く財産を与える場合や、相続人以外への遺贈がある場合は、できるだけ背景事情や配慮を丁寧な言葉で補足しましょう。
4.遺言執行者を信頼できる人に指定しておく
遺言執行者がいないと、相続手続きを進めるために全員の合意が必要となり、非協力的な相続人がいると手続きがストップしてしまうことがあります。
遺言執行者には、相続手続きに慣れた司法書士や行政書士、弁護士など、専門家を指名するのが安心です。信頼できる家族でもかまいませんが、中立性と実務力を重視するなら専門家に任せるのがベストです。
▶ アドバイス:
「遺言書に記載されている内容がきちんと実行されるか不安」「家族が揉めそうで心配」という方は、必ず遺言執行者を指定するようにしましょう。
5.専門家に相談しながら作成する
遺言書は、法律知識がないまま書くと思わぬところで無効になったり、家族に迷惑をかけたりしてしまうリスクがあります。
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自筆証書遺言でも形式ミスがあれば無効
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公正証書遺言でも、配分バランスが悪いと相続争いの原因に
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特定の相続人が排除された場合は、遺留分請求の恐れあり
だからこそ、司法書士や法律の専門家に相談しながら作成することが円満な相続への第一歩なのです。
▶ 当事務所のご案内(地域密着)
兵庫県揖保郡太子町にある当司法書士事務所では、姫路市・たつの市・太子町の皆さまに向けた「遺言書作成サポート」を行っております。初回相談は無料。公証役場との連携や、証人手配・内容チェックまで、安心してお任せいただけます。
第6章|よくあるQ&A:地域の司法書士が答える
遺言書の作成に関する疑問や不安は、誰にとっても尽きないものです。ここでは、姫路市・太子町・たつの市を中心に、実際に当司法書士事務所に寄せられた質問をもとに、わかりやすく解説していきます。
Q1.遺言書を書くのは何歳くらいからが理想ですか?
A:遺言書の作成は「思い立ったときが最適なタイミング」です。
法的には、満15歳以上であれば遺言書を作成できます。しかし、実際には以下のようなタイミングがよく相談に来られます。
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子どもが成人を迎えたとき
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住宅ローンの完済時
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夫婦のどちらかが入院したとき
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相続人が増えたり、減ったりしたとき
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高齢になり物忘れが心配になったとき
遺言書は「元気なうちに作っておく」ことが、もっとも安心です。認知症を発症してからでは遺言能力(判断能力)を疑われ、無効になってしまうリスクもあります。
Q2.内縁の妻(または夫)にも財産を残せますか?
A:可能です。遺言書を活用すれば、内縁関係の相手にも財産を遺すことができます。
ただし、注意点があります。内縁の配偶者は法定相続人ではないため、遺言書がなければ一切の相続権はありません。
そのため、次のような記載が必須です。
「私の財産のうち、預貯金(〇〇銀行〇〇支店・普通口座1234567)を、内縁の妻〇〇〇〇に遺贈する」
このように遺贈の形で財産を明記することが必要です。
さらに、内縁の相手が長年同居していた自宅に住み続けられるよう、配偶者居住権を活用するケースもあります。公正証書遺言での明確な記述が有効です。
Q3.孫や甥・姪などにも財産を渡したいのですが、可能ですか?
A:可能です。遺贈の形で相続人以外に財産を渡すことができます。
たとえば…
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お世話になった孫へ学資金として100万円を渡す
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介護をしてくれた甥に感謝の気持ちとして財産を残す
こうした遺贈は非常に増えており、家族のあり方が多様化した現代に合った遺言内容といえるでしょう。
ただし、相続人以外への遺贈は、遺留分侵害に注意が必要です。配分のバランスによっては、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けることもあるため、専門家と相談しながら設計することをおすすめします。
Q4.一度書いた遺言書は、あとから修正できますか?
A:はい、遺言書は何度でも書き直し(撤回)可能です。
遺言は「最終の意思」を尊重する制度です。そのため、新しく書いた遺言書が自動的に優先される仕組みとなっています。
ただし、書き直しの際には以下の点にご注意ください。
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前回の遺言書の撤回について明記すること
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新旧の遺言が矛盾していると、相続人が混乱する可能性があること
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公正証書遺言で作成すれば、安全に撤回・上書きできる
自筆証書遺言の場合、前の遺言書を破棄しないまま保管しておくと、死後に複数の遺言書が見つかってトラブルになるケースも。破棄か明示的な撤回が望ましいです。
Q5.葬儀の内容やお墓のことも遺言書に書けますか?
A:書くことはできますが、法的拘束力はありません。
葬儀の内容や墓地・納骨に関する希望は、「付言事項」として遺言書に記載できます。
例:
「私の葬儀は家族葬とし、〇〇寺の納骨堂に納めてください」
このような付言は、家族への配慮や意思の伝達手段として非常に有効です。ただし、あくまで法的効力はないため、家族が尊重してくれるかどうかは関係性次第です。
▶ 実務ポイント:
葬儀や納骨に関しては、遺言書と合わせてエンディングノートや家族との事前の話し合いもしておくとより安心です。
Q6.遺言書の相談先として司法書士と弁護士、どちらがいいの?
A:相続登記や不動産・手続き全体をトータルで相談したいなら司法書士がおすすめです。
司法書士は、不動産登記・遺言執行・法的書類の作成に強く、遺言書の実行(=登記や名義変更)まで一貫して対応できるのが大きな強みです。
一方、遺産トラブルが深刻化している場合や、相続人間で法的争いが予想される場合には、弁護士に相談するのが適切です。
▶ 地域密着型で対応します:
当司法書士事務所では、遺言作成から相続登記・不動産名義変更までワンストップ対応しています。姫路市・太子町・たつの市エリアで豊富な実績がありますので、安心してご相談ください。
第7章|ケース別活用例(太子町・姫路市周辺で)
この章では、実際に兵庫県揖保郡太子町・姫路市・たつの市といった地域でよく見られる家庭構成や相続状況を踏まえて、遺言書の活用事例をご紹介します。
読者の皆様ご自身やご家族の状況と照らし合わせながら、「自分ならどう遺言を書けばいいか」を考えるきっかけにしていただければ幸いです。
ケース①:自宅不動産を長男に、預貯金を次男に
【家族構成】
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父(被相続人)
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長男(同居)
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次男(遠方で別居)
【状況】
父は高齢となり、長男と同居。日頃から介護や通院の付き添いなどを長男が行っていた。一方、次男とは年に数回の連絡にとどまる。
【希望】
「自宅は長男に相続させたい。次男には預貯金を渡してバランスを取りたい。」
【遺言書の工夫】
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自宅不動産を長男に遺贈
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預貯金のうち○○円を次男に遺贈
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付言事項に「長男には介護の感謝を込めて自宅を遺します」と明記
【ポイント】
不動産は金額換算が難しく、実務では相続人間で「評価額の不均衡」を巡ってトラブルになりがちです。このケースでは、遺言書によって事前に分配方針を明示し、かつ感謝の気持ちを添えることで、トラブル回避に成功しました。
ケース②:未成年の孫に教育資金を遺したい
【家族構成】
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祖母(独居)
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息子夫婦(共働き)
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小学生の孫(男児)
【状況】
祖母は財産の大半を現金で保有しており、子育て中の息子夫婦を経済的に支援したいと考えている。
【希望】
「孫が大学まで安心して通えるよう、教育資金として遺したい。」
【遺言書の工夫】
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孫に対して、現金500万円を「教育資金目的」で遺贈
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祖母の信頼する司法書士を遺言執行者に指定
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付言事項で「学費として使ってください」と補足
【ポイント】
未成年の孫に遺贈する場合、後見人の選定や管理方法も重要になります。この事例では、遺言執行者を設定することで、祖母の意図が確実に実行されるように配慮されました。
ケース③:内縁の妻に生活資金を遺したい
【家族構成】
-
本人(70代男性)
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内縁の妻(60代女性)
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法定相続人:兄弟のみ
【状況】
法的には結婚していないが、20年以上同居して生活を共にしている内縁の妻がいる。身寄りがないため、自分亡き後の生活が不安。
【希望】
「兄弟には財産を渡すつもりはない。すべて内縁の妻に残したい。」
【遺言書の工夫】
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内縁の妻に対し、預貯金と自宅不動産を全額遺贈
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配偶者居住権の設定で、自宅に住み続けられるよう明記
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付言事項で、兄弟には財産を遺さない理由を丁寧に説明
【ポイント】
内縁の妻は法定相続人ではないため、遺言書がなければ何も受け取れません。このような場合、遺言書の存在が極めて重要です。また、兄弟に対しても感情的な衝突を避けるため、理由を誠実に伝える文言が効果的です。
ケース④:家業を継ぐ子に事業用資産を集中相続させたい
【家族構成】
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父(中小企業経営者)
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長女(会社継承予定)
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長男(一般企業勤務)
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次女(専業主婦)
【状況】
地元姫路市で長年家業(建設業)を営む。将来的には長女に事業を継がせる予定。会社株式・社用地・機材などが主な資産。
【希望】
「家業を継ぐ長女に会社に関する資産を集中して渡したい。他の子どもには預金や保険などを。」
【遺言書の工夫】
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株式や事業用不動産を長女に遺贈
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預貯金を長男・次女に均等に配分
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遺留分を侵害しないよう財産全体のバランスを調整
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付言で「後継者支援のため」と説明
【ポイント】
事業承継が絡む相続は、遺言書が極めて重要です。特に会社株式や事業用資産は分割が難しいため、承継者を明示して集中相続させることがトラブル防止に繋がります。
ケース⑤:地域貢献として団体に寄付したい
【家族構成】
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独身女性(80代)
【状況】
地元のボランティア団体に長年関わり、死後は支援していた福祉団体に財産を寄付したいと考えている。
【希望】
「遺産の一部をNPO法人〇〇会に寄付したい」
【遺言書の工夫】
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財産の30%を特定NPO法人に遺贈
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残り70%を法定相続人に分配
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司法書士を遺言執行者に指定し、手続を確実に実行
【ポイント】
団体への寄付は、法的に「遺贈」という形式で実行可能です。ただし、団体の法人格の有無や寄付受入体制も確認しておくことが重要です。
第8章|おわりに:遺言書作成は未来への思いやり
ここまで、「遺言書でできること」を8つの法的効力とともに一覧で紹介し、その背景にある法律、具体的な活用事例、そして書き方のコツまでを解説してきました。
遺言書は、「亡くなった後のことを考える」という、どこか重たい作業に思えるかもしれません。しかし本当のところ、それは“未来の家族への贈り物”であり、“生きてきた証”を残すことができる貴重な手段なのです。
遺言書は、「残された人」を助ける優しさの証
遺言書があるだけで、家族の負担は大きく軽減されます。
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「何をどう分ければいいのか」
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「誰が手続をするのか」
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「本当はどうしたかったのか」
こうした疑問や迷いが、たった1通の遺言書で一気に晴れることもあります。
特に、姫路市・太子町・たつの市といった地域では、家族間の結びつきが強い反面、財産の話を切り出しにくいという傾向もあります。だからこそ、遺言書の存在が大きな安心材料になるのです。
遺言書作成は“思い立った今”がベストタイミング
「もう少し元気になってから」「子どもが結婚してから」——そう思っているうちに、判断能力が低下してしまえば、もはや遺言書は書けなくなります。
実際、認知症と診断されたことで遺言作成を断念せざるを得ない方も、地域で少なくありません。健康で意志がはっきりしている今こそが、最良の書きどきです。
遺言書作成の5ステップ(スムーズな進め方)
以下は、当事務所でご案内している「遺言書作成までの標準的な流れ」です。
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現状把握・ヒアリング
→ ご家族構成・財産内容・希望の分配方法などを整理 -
草案の作成と検討
→ 自筆/公正証書の選択、内容の調整、リスクの確認 -
必要書類の準備
→ 戸籍、固定資産税評価証明書、通帳写しなど -
遺言書の作成
→ 自筆証書なら作成サポート、公正証書なら公証役場との調整 -
保管・執行体制の整備
→ 保管方法、遺言執行者の指定、家族への伝え方
司法書士にご相談いただくことで、この一連の流れをすべてスムーズにサポートできます。
司法書士に相談するメリットとは?
「弁護士のように法廷に立つわけではないが、書類作成や手続実務に強い」——それが司法書士の強みです。
遺言書についても、
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法律に基づいた内容チェック
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実務上の不備の防止
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家族構成や資産背景に合ったアドバイス
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遺言執行者としての対応
などを通じて、法律面と実務面の両方からバックアップいたします。
地域密着型の司法書士事務所として
私たちは、兵庫県揖保郡太子町を拠点に、姫路市・たつの市・相生市など、播磨地域の皆さまの遺言・相続のお悩みに日々向き合っております。
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「まずは相談だけしてみたい」
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「家族構成が複雑で誰に聞けばいいか分からない」
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「登記とあわせてスムーズに対応してほしい」
そんなときこそ、どうぞお気軽にご相談ください。
最後に——遺言書は、人生の物語を“次へ”つなぐもの
財産の分け方にとどまらず、あなたの価値観、信頼、愛情を未来に託すのが、遺言書の本当の役割です。
「あなたが築いてきた人生を、家族がどう受け継いでいくのか」
その道しるべとなる一通の手紙を、ぜひ今このタイミングで、考えてみてください。





