配偶者居住権とは?
配偶者居住権は、2020年の民法改正で新設された制度で、被相続人が所有していた建物に配偶者が住み続けることを可能にする権利です。この制度により、配偶者は不動産の所有権を取得する必要なく、終身または一定期間、無償で建物を使用・収益することができます。
これにより、配偶者の生活基盤を守りつつ、遺産分割に柔軟性を持たせることが可能となりました。
配偶者居住権の活用方法
- 住居の確保と遺産の有効活用: 配偶者が自宅に住み続ける一方で、所有権を他の相続人に分配することで、遺産全体のバランスを保つことができます。これにより、配偶者は住居を確保しつつ、他の相続人も公平な分配を受けられます。
- 相続税の節税効果: 配偶者居住権は所有権よりも評価額が低くなる傾向があり、これにより相続税の負担を軽減できる場合があります。ただし、具体的な評価額や税務上の扱いについては専門家の助言が必要です。
配偶者居住権を活かした遺産分割の具体例
以下に配偶者居住権を活用した遺産分割の具体例を挙げます。
事例:家族構成と財産
- 被相続人:夫
- 配偶者:妻
- 子供:長男・長女
- 遺産内容:
- 自宅(評価額3,000万円)
- 預貯金(評価額1,000万円)
遺産分割のケース
- 配偶者居住権を設定
- 妻が自宅の配偶者居住権(評価額1,200万円)を取得。
- 子供たちが自宅の負担付所有権(評価額1,800万円)を共有。
- 預貯金の分割
- 預貯金1,000万円を子供たちで均等に分割(各500万円)。
結果
- 妻は引き続き自宅に住むことができ、生活基盤を維持。
- 子供たちは預貯金と負担付所有権を相続することで公平な分割が実現。
注意点
- 登記の必要性: 配偶者居住権を第三者に対抗するためには、登記が必要です。登記を怠ると、後に不動産が第三者に売却された場合などに、居住権を主張できなくなる可能性があります。
- 権利の譲渡や賃貸の制限: 配偶者居住権は一身専属の権利であり、譲渡や賃貸に出すことはできません。また、配偶者の死亡により消滅します。
- 維持費や修繕費の負担: 配偶者居住権を設定した場合、建物の維持や修繕に関する費用負担について、事前に取り決めておくことが重要です。明確な取り決めがないと、後々のトラブルにつながる可能性があります。
- 税務上の考慮: 配偶者居住権の設定や放棄に伴う税務上の扱いは複雑であり、場合によっては税負担が増加することもあります。専門家の助言を得て、慎重に検討することが必要です。
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配偶者居住権の評価と調整 配偶者居住権の評価額を適切に見積もる必要があります。評価額は、建物の市場価値や配偶者の年齢、法定耐用年数などを考慮して算出されます。
まとめ
配偶者居住権は、配偶者の生活を守りつつ、遺産分割を円滑に進めるための有効な手段です。しかし、その活用には法的手続きや税務上の考慮が必要であり、専門家の助言を得ることが重要です。適切に活用することで、家族全体の利益を最大化し、円満な相続を実現することができます。