【完全解説】姫路市空家等対策計画のポイントと私たちの暮らしへの影響
世界遺産であり国宝の「姫路城」を抱き、豊かな歴史と文化、瀬戸内海の恵みと自然に彩られた兵庫県姫路市。人口約53万人を擁する播磨地域の中核都市として力強い発展を続けてきたこのまちでも、現在、全国的な社会問題となっている「空き家問題」の波が静かに、しかし確実に押し寄せています。
「誰も住まなくなった実家」「長年手入れがされず放置されている隣の家」。こうした空き家が増加し、適正な管理が行われないまま放置されると、建物の老朽化による倒壊や屋根瓦の落下といった「防災上の危険」、雑草の繁茂や害虫・害獣の発生、不法投棄による「衛生面の悪化」、そして美しいまち並みを損なう「景観の悪化」など、近隣住民の生活環境に深刻な悪影響を及ぼします。これは単に個人の財産管理の問題にとどまらず、地域コミュニティの活力そのものを奪いかねない極めて重大な課題です。
⚖️ 法律による「空き家」の定義と自治体の責務
国はこうした状況に危機感を抱き、平成27年(2015年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家法)」を全面施行しました。この法律の第1条では、「地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進する」という目的が明記されています。
空家法第2条第1項では、空き家を「居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物等」と定義しています(※概ね1年間使用実績がないことが基準の一つとされます)。そして第4条において、市町村は「空家等対策計画」を作成し、必要な措置を適切に講じる責務があると定められました。
姫路市においても、この国の動きに呼応する形でいち早く平成29年(2017年)3月に「姫路市空家等対策計画」を策定しました。さらに同年6月には、法に基づく措置に加えて、市独自の周辺への注意喚起(危険を示す表示板の設置など)や緊急時の応急措置などを定めた「姫路市老朽危険空家等の対策に関する条例」を制定し、積極的な対策を講じてきました。
しかし、人口減少や超高齢社会がさらに進行する中、空き家の増加と老朽化の波は留まることを知りません。そこで姫路市は、これまでの取り組みの成果と新たな課題を踏まえ、上位計画である姫路市総合計画「ふるさと・ひめじプラン2030」等と緊密に連携を図りながら、令和4年(2022年)3月に「姫路市空家等対策計画」を全面的に改定しました。
本記事では、この最新の「姫路市空家等対策計画(改定版)」及び、計画の根拠となる「空家法に関する国からの基本指針・ガイドライン(資料編)」の内容を徹底的に読み解き、姫路市内に家や土地を所有している方、将来実家を相続する予定の方、そして地域の安全なまちづくりに関心のある皆様に向けて、専門用語を分かりやすく噛み砕いて網羅的に解説します。「自分の財産を負動産にしないため」、そして「いざという時に重いペナルティを受けないため」の完全保存版ガイドとして、ぜひ最後までご一読ください。
第1章:数字で見る姫路市の空き家の現状と課題
効果的な空き家対策を講じるためには、まず姫路市が直面している「現実」をデータから正確に把握する必要があります。国の統計調査や、姫路市が独自に行った大規模な市内全域の実態調査から見えてきた、深刻な現状を詳しく読み解いていきましょう。
1. 人口・世帯の推移と将来予測(巨大な空き家予備軍の発生)
姫路市の人口は、平成22年(2010年)の約53.6万人をピークに減少傾向に転じており、令和2年(2020年)の国勢調査時点では約53.0万人となっています。国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計によると、およそ10年後の令和12年(2030年)には約50万人、20年後の令和22年(2040年)には約47万人にまで減少すると予測されています。同時に、65歳以上の高齢化率も上昇を続け、令和22年には32.5%に達すると見込まれています。
一方で、「世帯数」に目を向けると、全く異なる動きをしています。人口が減少しているにもかかわらず、世帯数は平成7年(1995年)から令和2年(2020年)の間になんと1.3倍に増加しているのです。これは、1世帯あたりの人数が減り(令和2年時点で2.37人/世帯)、核家族化や単身世帯の増加が急速に進んでいることを意味します。特に注目すべきは、高齢者世帯の急増です。同期間において、「高齢夫婦世帯」は2.4倍、「高齢単身世帯(一人暮らし)」は3.1倍に激増しています。
💡 なぜ「高齢単身世帯の増加」が問題なのか?
高齢単身世帯(一人暮らし)の急増は、その方が施設に入所したり、病院へ入院したり、あるいはお亡くなりになった際に、そのまま家に住み継ぐ人がいなくなり、一気に「空き家化」するリスクが極めて高いことを示しています。つまり、姫路市内には、数年〜十数年後に空き家になる可能性が高い「巨大な空き家予備軍」が蓄積され続けているのです。
2. 総住宅数と空き家数の推移(全国・兵庫県との比較)
総務省が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」によると、平成30年(2018年)時点での姫路市の総住宅数は25万1,780戸、そのうち空き家数は3万7,660戸に上ります。総住宅数に占める空き家の割合を示す「空き家率」は15.0%となっており、兵庫県平均(13.4%)や全国平均(13.6%)と比較しても、姫路市の空き家率は高い水準で推移していることが分かります。
さらに深刻な問題を浮き彫りにしているのが、空き家の「種類」です。統計上、空き家は大きく「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅(別荘など)」、そして「その他の住宅」の4つに分類されます。「その他の住宅」とは、賃貸にも売却にも出されず、別荘でもなく、長期間誰も住む予定がない、いわゆる「市場に流通せず放置されている空き家(居住目的のない空き家)」を指します。
姫路市における一戸建ての空き家(約16,040戸)のうち、なんと76%にあたる12,280戸がこの「その他の住宅」に該当しています。全国平均の「その他の住宅」の割合が半数以下であることを考えると、姫路市には「利活用されずにただ眠っているだけの、将来問題化しやすい家」が極めて高い割合で存在していると言わざるを得ません。
3. 市内全域調査から見えたリアルな実態(外観目視調査)
統計データという大枠だけでなく、姫路市は平成29年度から令和元年度にかけて、民間事業者に委託し、市内全域を歩いて回る「外観目視調査」を実施しました。この調査で確認された、使用実態の可能性がない明らかな空き家4,297戸の詳細な分析から、空き家問題の解決を困難にしているいくつかの重大な要因が判明しました。
① 特定の地域への集中(密集市街地の課題)
空き家の分布を小学校区別に見ると、「飾磨(227件)」「大津(165件)」「白浜(146件)」などの地域で件数が多くなっています。さらに面積あたりの密度(件/ha)で見ると、「野里(0.88件/ha)」「広畑(0.82件/ha)」「城北(0.81件/ha)」といった地域が上位にきます。
これらの地域は、姫路市都市計画マスタープランにおいても「密集市街地」としての課題が挙げられているエリアと重なります。道が狭く、古い木造住宅が密集している地域で空き家が増えることは、火災発生時の延焼リスクや、地震倒壊時の道路閉塞(救急車両が入れない)リスクを極端に高めるため、非常に危険です。
② 空き家の破損状況(屋根・外壁の劣化)
建物の主要構造部である外壁と屋根の破損状況を調査した結果、壁と屋根の両方に「一部破損」または「著しい破損・陥没」が見られる空き家が全体の6.6%(283戸)存在することが分かりました。
一方で、「壁・屋根ともに破損のない正常な空き家」も約半数(49.7%)存在しています。家は人が住まなくなると、換気や通水が行われないため急速に傷みます。状態が良い今のうちに、いち早く利活用や市場への流通を促すことが急務です。
③ 危険な空き家と「接道要件」という高い壁
調査された空き家のうち、屋根材の落下や外壁の崩落などにより「第三者に危害を与える可能性のある危険な空き家」が699戸(全体の約16%)も確認されました。これらに対しては、早急な安全措置や解体が強く求められます。
しかし、ここで空き家問題の抜本的な解決を阻む最大の障壁が立ちはだかります。それが「接道状況(道路と敷地の関係)」です。
建築基準法では、家を新しく建てる(建て替える)ためには、原則として「幅員4m以上の道路に、敷地が2m以上接していなければならない(接道義務)」という厳格なルールがあります。姫路市の空き家全体で見ると、前面道路の幅員が4m以下の「接道状況が悪い空き家」が56%(2,401戸)を占めています。さらに、前述の「危険な空き家(699戸)」に限定すると、約50%(340戸)がこの接道不良に該当します。
⚠️ 再建築不可物件の罠
接道義務を果たしていない土地は「再建築不可物件」と呼ばれます。つまり、「どんなにお金をかけて古い家を取り壊して更地にしても、そこに新しい家を建てることが法的に許されない」のです。家が建てられない土地は資産価値が極端に低く、買い手がつきません。売却もできず、かといって解体費用(数百万円)も出せないため、危険な状態のまま放置され続けるという最悪の負のスパイラルに陥ってしまいます。
④ 市民からの通報の急増と解体措置の状況
空き家が管理されず放置されると、雑草の繁茂や害虫の発生、不審者の侵入リスクなどにより、周辺住民の生活に直接的な悪影響を及ぼします。姫路市に寄せられた老朽空き家等に関する市民からの通報件数は年々増加傾向にあり、平成17年度から令和2年度までの累計で423件に達しています。
これに対し、市が所有者への指導等を行い、解体・安全措置に至った(解決した)件数は累計で209件となっています。通報の約半数が解決しているものの、依然として多くの未解決物件(調査中や指導継続中)が残されており、特に倒壊の危険性が切迫している「Aランク」の空き家に対する迅速な対応が求められています。
第2章:空家等の発生メカニズムと基本方針
第1章で見てきたような、少子高齢化、接道不良、密集市街地といった複雑な要因が絡み合った空き家問題を解決するため、姫路市はどのような考え方で対策を進めていくのでしょうか。空き家が発生し、問題化するまでのメカニズムを理解した上で、市が掲げる「3つの基本方針」を解説します。
1. 空き家が発生し、問題化するメカニズム
空き家は、ある日突然「危険な空き家」になるわけではありません。複数の要因が複雑に絡み合い、時間の経過とともに問題が深刻化していきます。行政の計画では、このメカニズムを以下の要因と時系列のプロセスで捉えています。
複雑に絡み合う4つの要因
- 社会情勢の要因: 人口減少、高齢化、家族構造の変化(核家族化)、地域における若年層の流出。
- 住宅の要因: 住宅ストック数(総量)の増加、根強い新築志向、中古住宅の品質や価格への不安。
- 所有者等の要因: 家に対する管理意識の希薄化、遠隔地への居住、経済的な余裕がない(解体費が出せない)、家の中の大量の家財の処分・整理ができない、売却への躊躇(親の家を手放したくない)、相続時の親族間の権利関係のトラブル。
- 制度面の要因: 誰に相談していいか分からない(相談体制の不足)、固定資産税の住宅用地特例(更地にすると税金が跳ね上がる)、接道要件による再建築不可の制約、行政による強制措置(代執行)には膨大な時間と法的手続きを要すること。
これらの要因が重なり、親の死亡や施設入所などをきっかけに空き家が発生します。その後、以下のように劣化が進行します。
| 経過年数 | 劣化の進行状況と周辺への影響 | 必要な対応フェーズ |
|---|---|---|
| 数年(初期) | 庭の草木が繁茂し、隣家や道路へ越境。害虫の発生など衛生面の悪化。不法投棄の標的に。 | 適正管理 利活用(売却・賃貸等) |
| 数年〜10年 | 換気不足による湿気で内部が腐朽。外壁の塗装剥がれや屋根の劣化が進行。 | 適正管理 利活用(改修が必要) |
| 10年〜20年 | 屋根瓦のズレ・落下、外壁モルタルの剥落など、部分的な落下が始まり、通行人に危険が及ぶ。 | 危険防止措置 解体 |
| 20年超(末期) | 柱や土台が腐朽し、自重を支えきれなくなる。台風や地震で建物全体が倒壊する危険性が極めて高い。景観も著しく悪化。 | 緊急の危険防止措置 解体・代執行 |
2. 姫路市が掲げる「3つの基本方針」と施策体系
法が定める通り、空き家の適正な管理は「所有者等」が行うことが大前提です。しかし、問題が複雑化する中、行政としても各段階に応じたサポートと毅然とした対応が求められます。姫路市は以下の3つの基本方針を柱として、総合的な施策を展開します。
- 【方針1:発生の抑制】 空家等の適切な管理は所有者等の責任で行われるべきものであることから、所有者等に対し、適切な管理に向けた情報提供、意識啓発、助言等を徹底的に行い、そもそも空き家を問題化させない(負動産にしない)環境づくりを進めます。
- 【方針2:利活用の促進】 空家等の期間が長期化すると建物の腐朽・破損が進み、売却や賃貸等が絶望的になります。状態が良い早期の段階での市場流通や、地域交流の場としての利活用を、専門家等と連携して強力に促進します。
- 【方針3:管理不全の解消】 既に周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼしている空家等については、市がその状態や悪影響の程度を総合的に判断し、空家法や条例に基づき、所有者等に対して指導、勧告、命令、さらには行政代執行などの厳格な措置を講じます。
第3章:姫路市が推進する具体的な施策の展開
ここからは、3つの基本方針に基づいて、姫路市が現在実施している具体的な対策や、市民が利用できる手厚い支援制度、そして悪質な放置に対する法的措置のプロセスについて、国のガイドラインも踏まえて深掘りして解説します。
1. 発生の抑制(住まいを「負動産」にしないための事前準備)
最も効果的でコストのかからない空き家対策は、「今住んでいる家を将来放置空き家にしないこと」です。親が元気なうちに、家族間で実家の将来について話し合うことが何よりも重要です。
■ プランニングノート(住まいの終活ノート)の作成・配布
姫路市では、住宅の賃貸・売却、相続や管理など、長年過ごした大切なマイホームの“これから”と、所有者本人の“これから”を考えるきっかけとして、「プランニングノート」を作成し、希望者に配布しています。また、毎年の固定資産税の納税通知書(約25万枚)に啓発チラシを同封し、「空き家の管理は所有者の責任であること」や「瓦の落下等で他人にケガをさせた場合の損害賠償責任(民法第717条)」について広く注意喚起を行っています。
■ 専門家による「空き家無料相談会」の定期開催
空き家の管理、利活用、除却、そして複雑な相続問題にお困りの方を対象に、姫路市と専門家(不動産鑑定士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士など)が合同で行う「空き家無料相談会」を定期的に開催し、法務や不動産取引の専門的な知見から解決の糸口を提供しています。
■ 相続登記の促進と税制特例の周知(国・県の制度活用)
空き家が放置され、売却も解体もできなくなる最大の原因の一つが「相続登記の未了(名義が祖父や曾祖父のまま放置されている状態)」です。この問題に対処するため、令和6年(2024年)4月1日から国の法律で「相続登記の義務化」がスタートしました。市は法務局などの関係機関と連携し、早めの名義変更手続きを強く推奨しています。
また、「実家を売ると税金が高く取られるのでは?」という不安に対し、一定の要件(昭和56年5月31日以前に建築された家屋等)を満たす実家を相続し、耐震リフォームをして売却、または更地にして売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」という非常に有利な税制特例についても広く情報提供を行っています。
■ 住宅改造の促進(長く住み続けるために)
高齢者が住み慣れた家で安全に長く暮らし続けられるよう、バリアフリー化などの住宅改造に要する経費を助成する「住宅改造費助成事業」や、耐震性を向上させる「わが家の耐震改修促進事業」を実施しています。家を長持ちさせることは、将来空き家になった際にも「価値ある中古物件」として市場で流通しやすくなるという大きなメリットがあります。
2. 利活用の促進(空き家を地域の資源・財産へ)
「売りたい・貸したい」所有者と、「買いたい・借りたい」利用希望者をつなぐマッチング支援や、改修費用の補助を通じて、空き家の流通を後押しします。
■ 「姫路市空き家バンク」の活用と成約の傾向
姫路市空き家バンクは、市内の定住促進と交流拡大を目的に平成28年(2016年)から運用されています。令和3年(2021年)5月までのデータを見ると、累計で67件の物件が登録され、そのうち成約済みが28件(成約率約42%)となっています。利用登録者の約3割は県外からであり、移住ニーズの受け皿として機能しています。
登録物件や成約物件の建築年を見ると、昭和56年(1981年)6月以降に建てられた「新耐震基準」の物件の割合が成約物件において約4.5割を占めており、やはり築年数が比較的浅く、地震に強い物件が選ばれやすい(流通しやすい)傾向にあります。一方で、市街化調整区域(原則として家が建てられない農業や自然を守る地域)にある空き家は、各種法規制により活用や建て替えのハードルが高く、成約に至りにくいという課題も浮き彫りになっています。
💡 注目!農地付き空き家の取得要件緩和(1アール特例)
従来、農地を取得するには厳しい面積制限(下限面積要件)がありましたが、姫路市では農業委員会の協力を得て、空き家バンクに登録された空き家とセットで農地を取得する場合に限り、この下限面積を「100平方メートル(1アール)」まで大幅に引き下げる制度を令和3年(2021年)8月から開始しました。これにより、家庭菜園や半農半X(エックス)を楽しみたい移住者が、空き家と農地をセットで購入しやすくなりました。
■ 空き家改修の支援と古民家再生
地域のコミュニティ活性化を目的として、空き家を地域の「交流施設等」として活用するための改修工事に対して、費用の一部を補助する「姫路市空き家改修支援事業(交流施設型)」を設けています。また、歴史的町並み景観の維持に資する古民家等の再生には「姫路市古民家再生促進事業」の活用も検討し、単なる住宅にとどまらない多様な利活用を促進します。
■ インスペクション(建物状況調査)の普及による市場流通の促進
中古住宅に対する「見えない欠陥(雨漏りやシロアリ被害など)があるのでは」という消費者の不安を払拭するため、建築士などの専門家が建物の劣化状況を調査するインスペクションの普及を図っています。平成30年(2018年)の宅地建物取引業法の改正により、不動産業者は媒介契約時にインスペクション業者のあっせんの可否を示すことが義務付けられており、こうしたプロによる調査を活用することで、売主・買主双方が安心して取引できる市場環境の整備を進めています。
3. 管理不全の解消(危険な放置空き家への厳格な対応)
所有者への働きかけや支援を行っても改善されず、倒壊の危険や衛生面の悪化により周辺住民に被害を及ぼす恐れがある危険な空き家に対しては、市が毅然とした態度で指導や法的措置、さらには除却(解体)支援を行います。
■ 姫路市老朽危険空家対策補助金(解体費用の手厚い支援)
倒壊の恐れがあるなど、市が独自に定めた不良度測定基準で危険と判定された老朽空き家(個人所有等)を解体・撤去する場合、その費用の一部を補助する制度です(最大133万2千円等、条件あり)。前計画期間において115件もの利用(除却)実績があり、市民の安全確保に大きく貢献しています。
特に姫路市では防災の観点から、土砂災害特別警戒区域(レッド区域)や、土砂災害警戒区域(イエロー区域)、洪水浸水想定区域(浸水深3m以上)、さらに火災延焼リスクの高い密集市街地にある空き家の除却を重点的に支援・推奨する方針を打ち出しています。
🚨 国が示す「特定空家等」の4つの判断基準(ガイドラインより)
空家法に基づく国からのガイドライン(資料編)では、市町村が「特定空家等」と認定する際の客観的な判断基準(別紙1〜4)が示されています。以下のような状態にある空き家は、法的なペナルティの対象となる可能性が極めて高くなります。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれ: 基礎の不同沈下、柱の著しい傾斜、屋根や外壁の剥落・脱落の危険、擁壁の劣化など。
- 著しく衛生上有害となるおそれ: 吹付けアスベスト(石綿)の飛散、浄化槽の破損による汚物の流出や悪臭、ゴミの不法投棄によるネズミ・ハエの大量発生など。
- 著しく景観を損なっている状態: 屋根・外壁が汚物や落書きで汚損したまま放置、多数の窓ガラスが割れたまま放置、立木が建物を覆い隠すほど繁茂しているなど。
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切: 門扉が壊れ不特定多数が侵入できる状態(防犯上の危険)、動物が住み着き糞尿の悪臭が発生、シロアリが大量発生して近隣に飛来するおそれなど。
※重要なのは、現在被害が出ていなくても、「そのまま放置すれば将来確実に危険な状態になることが予見される」段階から、早期に「特定空家等」として指導を開始できるとされている点です。
■ 特定空家等に対する厳格な措置(法の発動とペナルティプロセス)
上記の基準に該当する「特定空家等」に認定された場合、市は空家法第14条の規定およびガイドラインに沿って、以下の非常に厳格な手続き(不利益処分を含む)を段階的に講じます。
【法的措置の厳しいフロー】
- 立入調査(法第9条): 市長は必要な限度において、職員等に空き家の敷地内等に立ち入って調査させることができます(原則5日前までに所有者へ通知)。立入調査を正当な理由なく拒んだり妨害したりした者には、20万円以下の過料が科せられます。
- 助言・指導(法第14条第1項): まずは行政指導として、修繕や除却、草木の伐採などの改善を文書等で促します。
- 【重大なペナルティ】勧告(法第14条第2項): 指導に従わない場合、相当の猶予期限を定めて改善を「勧告」します。
⚠️ 勧告を受けると、その空き家の敷地は地方税法に基づく「住宅用地特例」の適用対象から即座に除外されます。これにより、翌年からの土地の固定資産税が最大で6倍、都市計画税が最大3倍に跳ね上がります。 - 事前の通知と意見聴取: 次の「命令」を出す前に、所有者には弁明の機会(意見書の提出や、公開による意見聴取の請求権)が与えられます。
- 命令・公示(法第14条第3項・11項): 勧告も無視し、正当な理由がない場合、行政処分として措置を「命令」します。命令違反には50万円以下の過料が科せられます。さらに、命令が出たことは対象の空き家に「標識が設置」され、市の広報やウェブサイトで事実が公表(公示)されます。
- 行政代執行(法第14条第9項): 命令にも従わず、放置することが極めて不適切と判断された場合、最終手段として市が強制的に解体等を行います。かかった解体費用(通常数百万円規模)はすべて所有者に請求され、支払えない場合は国税滞納処分の例により、給与や預金、不動産などの財産が強制的に差し押さえられます。
- 略式代執行(法第14条第10項): 所有者が死亡して相続人全員が相続放棄をした場合や、戸籍調査等を尽くしても過失なく所有者を確知できない危険空き家に対しては、事前の公告手続きを経た上で、市が強制的に解体する「略式代執行」が行われます。
第4章:地域全体で守る姫路市の未来(計画の推進体制)
空き家問題は、建築、民法、税務、衛生、防犯など、極めて多岐にわたる専門知識を必要とします。そのため、市役所内の1つの部署だけでは到底対応できません。
1. 庁内連携と相談窓口の一本化
姫路市では、市民からの相談窓口を「都市局 住宅課」に一本化し、分かりやすい体制を整えています。その上で、内部では固定資産税を扱う「資産税課」、防犯対策の「危機管理室」、ごみ・不法投棄に対応する「美化業務課」、火災予防の「消防局予防課」、害虫等に対応する「保健所衛生課」など、全庁横断的な強力なネットワークを構築し、迅速に課題に対処します。
2. 専門家・地域団体との連携(姫路市空家等対策協議会)
市は条例に基づき、学識経験者(大学教授)、弁護士・司法書士等の法務専門家、建築士、宅地建物取引業者、そして市民代表(連合自治会や婦人会など)から構成される「姫路市空家等対策協議会」を設置しています。特定空家等の認定や法的措置の妥当性について、高度な専門的見地からの意見を聴取し、透明性と公平性を担保しながら施策を推進しています。
また、空き家の実態に最も早く気づくことができるのは近隣の住民や自治会です。地域団体と連携した見守りや情報提供のネットワーク強化を図っています。
3. 計画の目標(評価指標)とPDCAサイクル
計画の確実な実行を担保するため、姫路市は令和8年度(2026年度)までの5年間について、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回すための明確な数値目標(KPI)を設定しました。
| 評価指標(KPI) | 実績(令和3年度時点) | 目標(令和8年度まで) |
|---|---|---|
| ① 空き家周辺の近隣住民等から相談を受けた空家等の解決割合 | 約37% | 60% |
| ② 特定空家等のうち除却等の改善がなされた物件数の割合 | 約59% | 70% |
| ③ 空き家バンクの登録件数 | 67件 | 100件 |
| ④ 空き家バンク登録物件の利活用件数 | 30件 | 50件 |
| ⑤ 老朽危険空家対策補助金制度の利用件数 | 115件 | 250件 |
まとめ:空き家問題の当事者にならないために私たちができること
最新の「姫路市空家等対策計画」と国が定める「空家法・ガイドライン」を詳しく読み解くことで、空き家問題が決して他人事ではなく、放置すれば重い法的ペナルティ(固定資産税の最大6倍増税、50万円以下の過料、財産差し押さえを伴う強制解体など)を招く、極めてシビアな自己責任の問題であることがはっきりと理解できます。
姫路市は、解体補助金の充実や、空き家バンク・農地取得特例(1アール特例)を通じた利活用支援など、問題を解決しようとする所有者に対する「アメ(支援)」の政策を豊富に用意しています。一方で、周辺住民の生活を脅かす悪質な放置空き家に対しては、法律の規定に則り、躊躇なく「ムチ(強権的な法的措置)」を発動する強い姿勢を打ち出しています。
家は、人が住み、窓を開けて風を通し、定期的に手入れをして初めてその資産価値と安全性を保つことができます。「いつか誰かがどうにかするだろう」「兄弟のうちの誰かが相続するだろう」。その先送りが、問題解決のハードルを雪だるま式に高くし、最終的には将来の子供たちや近隣住民に多大な迷惑と重い経済的負担を押し付けることになります。
もし今、あなたが姫路市内に空き家を所有していたり、将来ご実家を相続する予定があるのなら、問題が手遅れになり税金が跳ね上がる前に、家族で話し合う時間を持ち、登記の確認を行い、市の相談窓口や無料相談会の扉を叩いてみてください。
世界遺産・姫路城を擁するこの美しいまちの景観と、安全で安心な暮らしを未来の世代へ引き継ぐために。空き家問題への対応は、私たち一人ひとりの「今」の行動にかかっています。
【姫路市】空き家に関する総合相談窓口
空き家の除却、老朽危険空家等の相談、空き家バンク、活用の相談はお気軽にどうぞ。
姫路市役所 住宅課
TEL:079-221-2642
Email:juutaku@city.himeji.lg.jp
ひょうご空き家の総合相談窓口(専門家による総合相談)
TEL:078-325-1021


