田や畑の農地について所有権を移転するには、
原則として農地法の許可が必要となります。
相続などのように、所有権移転の原因によっては農地法の許可が不要な場合もあります。
農地法の許可が不要な場合として、取得時効による場合があります。
取得時効の種類
取得時効には2種類あります。
占有を開始した時に、
①他人の所有であることを知っている、または知らないことについて過失がある場合
⇒20年間で時効成立
②他人の所有であることを知らず、かつ知らないことについて過失が無い場合(善意無過失)
⇒10年間で時効成立(短期取得時効)
短期取得時効の「無過失」について
例えばAさん所有の畑を、農地法の許可を受けずにBさんに売ったとします。
この場合、農地法の許可がありませんので畑の所有権はBさんには移転していません。
その後、Bさんが畑は自分の所有物だと認識して占有し続けた場合、
Bさんが無過失であれば、10年間で時効が成立することになります。
しかし、判例は農地法の許可を受けていないことについて、
農地の譲渡を受けた者が、通常の注意義務を尽すときには、譲渡を目的とする法律行為をしても、これにつき知事の許可がない限り、当該農地の所有権を取得す ることができないことを知りえたものというべきであるから、特段の事情のない限り、譲渡を目的とする法律行為をしただけで当該農地の所有権を取得したと信 じたとしても、このように信ずるについては過失が認められる。(昭和59年5月25日民集 第38巻7号764頁)
として、10年の短期取得時効は成立しないとしています。
したがって、農地法の許可無しに取得時効によって農地の所有権を移転する には、
特段の事情が無い限り20年間を要することになります。
民法第162条
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。