【相談事例】「資本金1円」で会社を設立できると聞いたが、実務上のデメリットはありますか?

この記事は約10分で読めます。

「資本金1円」で会社を設立できると聞いたが、実務上のデメリットはありますか?

ネット記事で「今は資本金1円からでも会社を作れる」と見ました。初期費用をできるだけ抑えたいので、資本金1円で株式会社(または合同会社)を設立しようと考えています。法的には問題ないとのことですが、融資を受けたり取引したりする上で、何か実務上のデメリットや困ることはあるのでしょうか?

ご相談者:たつの市新宮町にてITコンサルティング業で起業予定の方

司法書士からの回答・解説

おっしゃる通り、旧商法時代にあった「株式会社は1,000万円以上」といった最低資本金制度は撤廃されたため、現在では法律上「資本金1円」でも会社を設立・登記することは完全に可能です。

しかし、法律上可能であることと、実際にビジネスがスムーズに進むかどうかは別の問題です。司法書士として多くの起業家を見てきた経験から申し上げますと、資本金1円での設立は実務上のデメリットが非常に大きく、基本的にはおすすめしていません。

具体的なデメリットについて、大きく4つのポイントに分けて解説いたします。

資本金1円設立で直面する4つの大きなデメリット

① 法人用の銀行口座が開設できない可能性が高い
現在、マネーロンダリング(資金洗浄)や振り込め詐欺などの犯罪を防ぐため、各金融機関は法人口座の開設審査を非常に厳しくしています。資本金が1円など極端に少ないと、「実態のないペーパーカンパニーではないか?」「ビジネスを本気でやる気がないのでは?」と疑われやすく、多くの銀行で口座開設を断られてしまうリスクが高まります。口座が作れなければ、取引先からの入金も受けられず、事業をスタートできません。

② 日本政策金融公庫などからの「創業融資」が受けにくくなる
起業時に融資を受けたい場合、自己資金(事業のために自分で用意したお金)の額が審査の重要なポイントになります。資本金は、いわば「会社が最初から持っている体力」を示すものです。これが1円となると、「自己資金を全く準備できていない=計画性がない・返済能力に不安がある」とみなされ、希望額の融資を受けるのは非常に困難になります。

③ 取引先(特に大手企業)からの信用が得られにくい
会社の資本金の額は、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を見れば誰でも確認できます。取引先が新規契約を結ぶ際、社内審査(与信調査)を行うのが一般的ですが、その際に「資本金1円」の会社は「すぐに倒産するかもしれない」と判断されやすく、契約を見送られたり、不利な取引条件(前払いのみ等)を提示されたりするケースがあります。

④ 許認可が必要なビジネスができない場合がある
行う事業によっては、行政の「許認可」が必要です。例えば、一般建設業の許可を取るには「自己資本が500万円以上あること」といった財産要件が定められています。人材派遣業なども同様です。資本金が1円だと、こうした許認可の要件を満たすことができず、そもそも事業を始めることができなくなります。

💡 では、資本金はいくらに設定するのが適正?

ビジネスの規模や業種にもよりますが、一般的な目安としては以下の基準で決めることをおすすめします。

  • 初期費用 + 最初の3〜6ヶ月分の運転資金(売上が入らなくても会社を維持できる額)
  • 一般的には「100万円〜300万円」程度で設立される方が多いです。
  • ※消費税の節税の観点から、「1,000万円未満(999万円以下)」に設定するのが一つのセオリーです。(資本金1,000万円未満で設立すると、原則として設立から最大2期間は消費税の納税義務が免除されるためです。※インボイス登録状況等により異なります)

まとめ:資本金は「会社の体力と信用のバロメーター」

「とりあえず1円で作って、後から資本金を増やせばいい(増資)」と考える方もいらっしゃいますが、増資の手続きにも数万円〜の登録免許税や専門家報酬といった費用と手間がかかります。

初期費用を抑えたいお気持ちはよくわかりますが、設立後のビジネスを円滑にスタートさせるためには、ご自身の事業計画に見合った、ある程度現実的な金額を資本金として設定することが成功への近道です。

「自分のビジネスの場合、資本金はいくらがベストか?」「許認可の要件を満たしているか?」など、会社設立の初期段階で悩まれる方は多くいらっしゃいます。

たつの市、姫路市、揖保郡太子町、相生市周辺での会社設立・起業サポートにつきましては、後々のトラブルを防ぐためにも、ぜひ設立登記の前に当事務所にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました